持田 智也(もちだ としや)
日経BP社 生活メディア編成部 ネット事業プロデューサー
『日経クロストレンド』は、「新市場を創る人のデジタル戦略メディア」を編集コンセプトとして、市場創造や新商品の開発、マーケティング戦略などの最先端の動向を伝えるデジタル・メディアです。
今年の4月に創刊したばかりのメディアですが、私は創刊プロジェクトのマネージャーとして、開発段階から関わっています。創刊後はプロデューサーとして、このメディアをどう育てていくのか考えています。新しいマーケットを作って、新しいビジネスチャンスを獲得しようとしている人向けのメディアなので、モノづくりをしている人からマーケティングの仕事をしている人まで、多くの人にちゃんと読んでもらえるよう、読者の開拓をするのも私の仕事です。
日経BPというと、『日経ビジネス』や『日経トレンディ』などの雑誌が知られていますが、今回創刊した『日経クロストレンド』は、WEBサイトで、記事や機能を展開するデジタル・メディアです。パソコンやタブレット、スマートフォンなどで記事を読んだり、記事データベースなどの機能を使っていただくサービスです。月額2400円の有料サービスで、年間契約いただいた会員のみなさまには、オンラインで掲載した記事を編集部が厳選、再編集した冊子を毎月お届けしています。
スマートフォンで「記事を読み」、オフィスのパソコンで資料や提案書づくりに「記事を役立てる」というコンセプトで、記事や機能を作っています。たとえば、朝配信しているメールマガジンに掲載した最新記事を通勤途中でチェックし、オフィスでは、それらの記事のほか、記事データベースなどの機能も使って企画書を作る。こういった、仕事に役立ててもらう使い方を想定しています。開発段階からスマートフォンなどのモバイルデバイスでの活用比率が高まることを想定して、ユーザーインターフェースを設計しています。現状の利用者比率を見ますと、想定していた通り、モバイルでの利用者が多くなっています。
『日経クロストレンド』では、“マーケティング×テクノロジー”が大きなテーマとなっています。読者からのレスポンスを見ていると、実際にテクノロジーに興味のある人が食い付いてきてくれている実感がありますね。今のところ読者層は30代後半から40代が中心で、職種的にはやはりマーケティング職や企画職、それに経営層の方も多いようです。
記事は「事例」を中心に構成しています。ある企業が成功した、または苦戦している。その事例を徹底的に解説します。成功や失敗の背景には何があるのか、それが読めるのが専門媒体です。この事例の成功は、どの企業と組んだからできたのか、どのようなツールを使ったから実現したのか。そういったことが分かる記事を心がけています。
企業のマーケティング事例を追うと、その成功の裏側には、必ずといってよいほどテクノロジーが役立っています。この視点を持つことが、日経クロストレンドのテーマである“テクノロジーxマーケティング”です。最先端テクノロジーそのものの原理は理解できなくても、そのテクノロジーを使えば何ができるかは理解できる。技術者ではない会員読者でも、テクノロジー活用の利点はしっかり分かる。これが日経クロストレンドの目指すところです。
日経BPの月刊誌『日経トレンディ』は、創刊から30年間、「ヒットの裏側が分かる」メディアとして、消費者だけでなく、ビジネスパーソンにも読まれています。「モノ消費からコト消費へ」など、消費トレンドの移り変わりを伝えてきました。『日経クロストレンド』では、よりマーケティング視点を強めて、市場創造や未来のヒット予測など、ビジネス用途の記事を掲載しています。
「新市場を創る人のデジタル戦略メディア」としては、新たな市場を生み出したいと考えるビジネスパーソンに、「誰と組んで何を起こせば良いのか」のヒントを提供したいと思っています。「特集主義」と呼んでいますが、つねに2から3本の特集連載を掲載しています。創刊時には、米アマゾン社の戦略、各社で活躍する米P&G社のOB、OGの「成功の秘密」、そして自動運転について特集を企画しました。
こういった記事のほかに、年に2回、大規模なイベントを実施します。今年は6月に「日経クロストレンドフォーラム」を、11月に「日経クロストレンドエキスポ」を実施します。編集部が企画したセミナーや展示を通して、Webだけでは伝えられない「実体験」やマッチングの場を提供します。
「マーケティング」という言葉は、日本でも広く浸透していますが、実は一般的な日本語訳がないので、一言でまとめるのは難しいですね。その定義も人によってさまざまな解釈があると思います。
マーケティングというのは画一的なものではなく、例えばモノを作る人からそれを売る人まで、それぞれの立場や人に適した考え方が必要だと考えています。
私には、日経クロストレンドそのものをマーケティングするという業務があります。すでに日経ブランドをご存知のみなさんだけでなく、広く認知度を高めて、媒体の価値を知っていただく必要があります。私がこれから進めるマーケティング策が、日経クロストレンドで事例記事になるくらい成功するとうれしいですね(笑)
1989年入社。外食産業、百貨店・流通産業を担当後、パソコンブームの到来によりマニア向けパソコン雑誌「日経WinPC」を創刊開発から担当。副編集長、編集長を経て、インターネット事業としてデジタル製品情報提供サイト「PC Online」、医療とテクノロジーを結ぶ「日経デジタルヘルス」などの編集長を担当。その後、アジア各国の台頭にあわせた新事業開発のため、アジア事業プロデューサーとしてインド、タイ、ベトナム、インドネシア、台湾、中国各国で事業開発を担当。現在は、生活メディア本部編成部のネット事業プロデューサーとして業務を行っている。