IT・家電ジャーナリスト
安蔵 靖志(あんぞう・やすし)
IT・家電ジャーナリスト、家電製品協会認定 家電製品総合アドバイザー(プラチナグレード)、スマートマスター。AllAbout 家電ガイド。デジタル家電や生活家電に関連する記事を執筆するほか、家電のスペシャリストとしてテレビやラジオ、新聞、雑誌など多数のメディアに出演。ラジオ番組の家電製品紹介コーナーの構成などにも携わっている。
世代・トレンド評論家
牛窪 恵(うしくぼ・めぐみ)
大手出版社入社後フリーライターを経て、2001年4月、マーケティングを中心に行うインフィニティを設立。同代表取締役。トレンド、マーケティング関連の著書多数。「おひとりさま(マーケット)」(05年)、「草食系(男子)」(09年)は、新語・流行語大賞に最終ノミネート。フジテレビ系「ホンマでっか!?TV」、NHK総合「サタデーウオッチ9」、毎日放送「よんチャンTV」ほかでコメンテーターなどを務める。立教大学大学院(MBA)客員教授。22年より、経済産業省「生活製品産業研究会」委員。
共働き家庭が前提の世の中なのに
「実はいまだ働く女性の負担が大きいのが『洗濯』の分野」と言うのは、
世代・トレンド評論家の牛窪恵さん。
コロナ禍から生活が変化し、通勤や外出が増えたことで家事に効率性が求められるなか、
ラクに洗濯を済ませられる切り札として「乾太くん」が注目されています。
その魅力を牛窪さんと、家電の専門家の安蔵靖志さんに聞きました。
「今、家庭にはより一層のタイムマネジメントが求められています」。こう話すのは、世代・トレンド評論家の牛窪恵さん。コロナ禍が収束の兆しを見せて多くのビジネスパーソンが在宅勤務から会社通勤へシフトするなか、「会社から帰ってきて急いで調理や洗濯などの家事をする、といったかつての多忙な生活が戻ってきた」から。これまで家事に協力してくれていた家族も家にいる時間が少なくなるため、作業のシェアが難しくなり、家事にかけられる時間がやむを得ず減る傾向にあるのです。
実際、共働き家庭での家事事情は深刻だそう。「実態を詳しく知ろうと多くの家庭にインタビュー調査をすると、家に帰ってきた途端に家事に追われて、トイレに行く間もないほどの慌ただしい生活を送っている、という夫婦の話もよく聞きます」(牛窪さん)。
特に女性の負担が再び増えることを牛窪さんは懸念しているそう。帰宅してから就寝までの数時間で行う「洗濯」は、共働き家庭において食事の支度と並ぶ負担の大きい作業であるのが現状です(Q1参照)。牛窪さんがさまざまな家庭に出向いて具体的に聞き取りを行うと「そもそも洗濯物をあまり触られたくない」、「型崩れ防止などのために洗濯ネットを使うといった気配りができない夫には任せられない」といった女性の声が多く寄せられるとか。洗濯が夫婦で分担しにくい家事でもあることをつくづく痛感させられるそうです。
加えて夜の限られた時間で、洗濯して乾燥し、畳んで、しまうという一連の作業を終えるにはシビアな時間管理が必要になってきます。「私自身、全自動の洗濯乾燥機を所有して使っていますが、毎回、洗濯物を入れて乾燥が終わるまでにはおよそ3時間はかかります。帰りが遅くなってしまった時は、寝るまでに間に合わないこともしばしば。実際、多くの女性からこうした洗濯の時間管理の難しさを聞き、任せられない上に予定通りに作業を終えられない、という不満もかなり多く耳にします」(牛窪さん)。
- あなたはどの家事を行なっていますか?当てはまるものを全てお選びください。
ご自身ではなく、家族のための家事についてお答えください。 -
scrollable
「速く乾かしたい」ニーズは急増
そもそも日中家に人がいない共働き家庭では、突然の天候の変化や安全面を考えて洗濯物の外干しをしない家庭がほとんど。さらに近年は花粉やPM2・5などが服に付着することを嫌う風潮が、外干し離れに拍車をかけています。家電ジャーナリストの安蔵靖志氏によれば「そうしたニーズから、室内で洗濯物を乾燥できる機器のニーズは急増しています」。ただ、一方で問題も。一体型の洗濯乾燥機の場合、「例えば洗濯時の容量が10キロなのに乾燥は5キロ分しかできないなど制約が多いのが現状です。最近主流のヒートポンプ式洗濯乾燥機では庫内の温度がガスほどには上がらないため、乾燥力もそれほど強くありません。大容量の洗濯物を確実にカラッと仕上げる、ということが難しいのです」(安蔵氏)。
安蔵さんと牛窪さんに新しい乾太くんを触ってもらいました
牛窪さんもこれを実感しているようで「洗濯乾燥機に洗濯物を入れてから3時間経って取り出しても、洗濯物が乾き切らないことがよくあります。結局再び洗濯乾燥機に入れ直したり、浴室乾燥機に頼ったりしなければならないことも少なくないのです」。道具選びを間違えると洗濯物の乾燥は余計な手間がかかる非常にストレスの溜まる作業となってしまいます。「洗濯・乾燥一体型の機器なら洗濯物を入れてスイッチを押すだけで洗濯から乾燥まで自動で行ってくれる、と思いきや、逆に余計な手間や時間がかかることも多いのです」(安蔵さん)。
また洗濯は「洗濯途中に子供が帰ってきて、部活のユニフォームをすぐに洗って欲しいと言ってくるなど、とにかく予測不能な要因が多すぎる作業」(牛窪さん)。そうした際に、3時間後にまたもう1回洗濯乾燥機を回すというのは現実的ではありません。そもそもイレギュラーな作業ややり直しが頻繁に起こる洗濯に、全自動の洗濯乾燥機は向いていないのです。
ガス乾燥機なら圧倒的時短を実現
ガス式と電気式の乾燥時間の比較(6kgの洗濯物の場合)
- ガス式乾燥機は圧倒的に速い!
- 6kgで約60分、
9kgでも約90分
※ガス衣類乾燥機(乾太くん):リンナイ、電気ヒートポンプ式乾燥、電気ヒーター式乾燥 試験実施:リンナイ(株) 条件:実用衣類6kg(綿50%、化繊50%)/脱水度70% RDT63・標準コースで算出 ガス種:LPGの場合で約60分
「洗濯機と乾太くん」と「全自動洗濯乾燥機」の乾燥時間の比較イメージ
全自動洗濯乾燥機
- 洗濯
1回目 - 乾燥
1回目 - 洗濯
2回目 - 乾燥
2回目
洗濯機
- 洗濯
1回目 - 洗濯
2回目
- 乾燥
1回目 - 乾燥
2回目
約3時間で終了
半分以下に時短夜の洗濯もOK!
共働き世帯にぴったり
洗濯と乾燥が別々にできるから、1台で洗濯&乾燥よりも断然はやい。洗濯にかかる時間が半分以下で終わります。
ガス乾燥機なら圧倒的時短を実現
そうした中で注目されているのが、2023年7月に発売された大容量9キロまでの洗濯物を乾燥できる新しい「乾太くん」。ガスを使い80度の熱風で衣類を乾燥するから、標準的な4人家族の1日の洗濯物の量である6キロなら60分、9キロなら90分で確実に衣類を乾燥できます。「乾燥中にも洗濯機を回せるため、何回かに分けて洗濯をできるのがうれしいですね。全自動の洗濯乾燥機に比べて圧倒的に作業が速く終わるのは、大きなメリットです」(牛窪さん)。1分1秒が惜しい家庭の家事時間を無駄なく活用できるうえ、仕上がりがカラッとして、ふわふわ。「庫内に湿度センサーが搭載されており、服が乾燥したかどうかをきちんと確認してくれる。つまり『乾き残し』がないのが特徴」(安蔵さん)なのだとか。
ヒートポンプ式の全自動洗濯乾燥機だと「完全に乾き切ってない状態のまま、洗濯物をほったらかしにしてしまうと、湿った臭いが付いて気になるのですが、その心配がないのもありがたいです」(牛窪さん)。大風量の熱風で回転させながら乾かすことで、洗濯物は乾太くんの庫内で広がりながら回転する仕組みになります。そのため、シャツや洗濯物がシワになりにくいのも特徴です。
タオルはふわふわに
シャツのしわも低減
コロナ禍で人々は「家の中の快適」を求めて、身近なサービスなどにお金をかける傾向が続いていました。「例えば、クリーニングやコインランドリーがブームになったのも、服やタオルシーツの肌触りや清潔感を、常に感じていたいから」(安蔵さん)。こうした快適に慣れてしまった一方で、今物価が高騰してそのサービス価格が急上昇しています。そこで1回6キロの場合83円でコインランドリーと同じクオリティのふわふわで心地のいい衣類の質感を「自宅で」生み出せる乾太くんの価値は、さらに注目されていきそうです。
「家事は手間を軽減しようとしても、有償で『外部化』するか、家族などの協力を得て無償で『分業化』するか、自助努力で『時短化』するかの3択しかありません」(牛窪さん)。実はこれまで分担が難しいとされていた洗濯も、乾太くんがある家庭は、ない家庭以上に洗濯の家事分担ができている、というデータもあります(Q2参照)。お金のかかる外部化に頼らず、時短と分業を進められる乾太くんは、家事の時間マネジメントの切り札になりそうです。
- 男性に伺います。あなたのご家庭の普段の洗濯について、
あなたが担当している家事を選んでください。 -
scrollable
洗濯から乾燥・畳む・しまうまでを完結できる
ランドリールームが急増
乾太くんは今、販売台数が92年の販売開始から累計で100万台となるヒット商品となり、加速的に普及しています。近年は、あらかじめ乾太くんが標準装備された新築住宅やマンションが販売されるなど、生活インフラとして欠かせないアイテムになっています。
そうした中で注目されているのが、乾太くんを中心に据えた新しい家の間取り。洗濯には「洗濯・乾燥が終わった洗濯物をリビングなど別の場所に移動させて畳んだり、それを仕分けして各部屋に運んでしまったりという『見えない家事』が多く発生します。この負担を軽減して快適な暮らしを実現するための、新たな間取りが求められています」と牛窪さん。注目されづらいけれど洗濯においてかなり負担のかかる「たたむ・しまう」といった工程をいかに省略できるかが、家事のタイムマネジメントにおいては重要。そこで、最近の住宅は乾太くんで乾燥した服をその場でしまったり畳んだりでき、必要ならアイロンがけが出来るような広めの「ランドリールーム」を備えることが増えているのだとか。
実際、こうした間取りは多くの建築家や工務店が提案をしています。「4件に1件は広いランドリールームを中心にした間取りを採用している」(素箱の秋慎一郎代表)、というハウスメーカーもあるほど。ここ1年で急増しているのは、洗濯機と乾太くんを並列に床置きするレイアウト。乾太くんのそばに作業台を設けられるため、「洗濯物を取り出して、無理なく乾太くんに入れられる。さらに取り出してすぐに作業台の上で畳んだり仕訳したりと作業ができる使い勝手の良さが施主からは高評価を得ています。」(新潟の住宅メーカー、坂井建設の古川和茂・CMO)。
広いランドリールームを作れない家庭でも「乾いた洗濯物を、リビングなどに一時的に広げておくことを嫌う人も多くなっています。そこでリビングのそばに小さな書斎兼作業スペースのような場所を作り、洗濯物を一旦そこに保管して、家族一人ひとりが部屋に持ち帰るというような間取りの工夫をするケースも増えているようです」(牛窪さん)。