暮らしにリラックスを。
ユーザー体験から見る、リンナイのある暮らし。

デベロッパーが語る「暮らし」と「高効率給湯器」 <前篇>

心地よい体験と環境性能を
実現できるマンションとは

  • 早稲田大学創造理工学部建築学科
    スマート社会技術融合研究機構(ACROSS) 機構長
    田辺新一 教授

  • 野村不動産
    住宅事業本部 商品戦略部
    村上静枝 部長

  • リンナイ
    開発本部 第三商品開発部
    林泰平 部長

※所属・役職等はすべて
日経ビジネス掲載(2025年1月)当時のものです

生活の豊かさと省エネの両立を実現する、地球に優しく人々が安心して暮らせるマンションとはどのようなものか? 早稲田大学 理工学術院創造理工学部建築学科 田辺新一・教授と、野村不動産 住宅事業本部 商品戦略部 村上静枝・部長、リンナイ 開発本部 第三商品開発部 林泰平・部長が、国の省エネ政策、新築戸建て住宅、および分譲マンションの最新動向の3点から、これからの住まいのあり方と高効率給湯器の必要性を議論する。
(聞き手=日経BP総合研究所 小原隆 上席研究員)

これからのマンションに
求められるもの

現在およびこれからのマンションに求められるものは何でしょうか? 野村不動産様のマンション作りの思想や特徴について、暮らし方、省エネ性、レジリエンス(安全性)の3つの観点からお聞かせください。

野村不動産 住宅事業本部 商品戦略部 村上静枝 部長

村上野村不動産グループでは、2050年に向けたありたい姿として「Earth Pride ー地球を、つなぐー」を策定しました。その実現に向けて、2030年までに取り組むべき重点課題を挙げており、それが「ダイバーシティ&インクルージョン」「人権」「脱炭素」「生物多様性」「サーキュラーデザイン」の5つです。

その中でも、マンションや戸建て住宅といった開発分譲事業は、脱炭素、生物多様性、サーキュラーデザインの3つに重点を置いています。とはいえ、こうした環境に関する取り組みが、お客様に充分に伝わっていないという課題感も感じています。

野村不動産では2024年5月から「断熱性能等級6」の物件供給を開始。その第1弾となる「プラウド横浜新子安」

マンションは
「体験と時間」を提供

村上またコロナ禍を経て、分譲マンションが提供する価値は大きく変わってきました。お客様のライフスタイルや価値観が多様化したことで、そこにどう応えていくかということが、これからも永続的に住宅を提供していく我々のテーマ。それぞれのお客様のスタイルにあった「その人にとってちょうどいい体験と時間の経過」を大切にしつつ、その上で環境配慮に結び付くような住宅の提案を目指しています。

例えば、近年は共働きのお客様が増加していますが、彼らが最重視しているのは「いかに自分の時間を作るか」ということ。仕事や育児で時間がない分、家事の時間を短縮して、その分を自分や家族が豊かになれる時間を作り出そうと考えていらっしゃるようです。

そうした方には、例えばリンナイの「デリシア」のようなオート調理機能で、美味しい食事を手間なく作れるガスコンロを選ばれる方が多いですね。毎日の洗濯が圧倒的に楽になり、ふわふわの洗濯体験が実現できるガス衣類乾燥機の「乾太くん」と、その空間で行われる作業や動線にまで配慮された+αのプランも人気です。

ライフスタイルの変化はコロナで一気に加速しましたが、それと同時に気候変動の影響で豪雨や洪水、豪雪といった災害が増加してきました。こうした災害に対するレジリエンスも、今後ますます重視されると感じています。

オート調理機能で、おいしく、手間なく、簡単に作れるコンロ「デリシア」
スピード乾燥とふわふわの仕上がりで満足度の高い衣類乾燥機「乾太くん」

第6次エネルギー基本計画におけるZEH-Mの現状と、第7次エネルギー基本計画を踏まえて、省エネ・カーボンニュートラルマンションのこれからについてお教えください。

早稲田大学創造理工学部建築学科
スマート社会技術融合研究機構(ACROSS)機構長 田辺新一 教授

田辺まずは、「ZEH-M」とは何かについて簡単に説明します。ZEH-Mは「Net Zero Energy House Mansion(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス・マンション)」の略。ZEH水準の強化外壁基準(断熱性能等級5)と20%以上の一次エネルギー消費量の削減を満たしており、なおかつ太陽光発電などの創エネ設備を導入することで一次エネルギー消費量が100%以上削減できた住棟のこと。省エネ率や太陽光発電の有無によって、ZEH-M、Nearly ZEH-M、ZEH-M Ready、ZEH-M Orientedの4種類に分類されます。

野村不動産は2019年からZEH-M Orientedに関する取り組みをスタートしていますね。ZEH-Mが一気に広がったのは2020年のカーボンニュートラル宣言がきっかけだったので、業界の中でも特に早くから環境への配慮を考えられていたのだと思います。

我が国では、「2030年度以降新築される住宅について、ZEH水準の省エネルギー性能の確保を目指す」ことを目指しており、それはZEH-Mも同様です。現在はZEH-Mに対して「もう少し厳しくした方が良いのではないか」という声も上がっており、第7次エネルギー基本計画に向けて、省エネ、断熱水準の引き上げも検討されていると聞いています。

集合住宅におけるZEHの定義

住棟での評価
断熱性能
※全住戸で以下を達成
省エネ率(一次エネルギー消費量削減率)
※共有部を含め住宅全体で以下を達成
再エネ除く 再エネ含む
ZEH-M 強化外皮基準
(ZEH基準)
20% 100%以上
Nearly ZEH-M 75%以上100%未満
ZEH-M Ready 50%以上75%未満
ZEH-M Oriented 再エネの導入は必要ない
建物の階数に応じた目指すべき水準
1〜3階建て
4〜5階建て
6階建て以上

環境性能が資産価値に

村上最近は省エネに対する意識の高い方が増え、特に初めてマンションを購入するような若いご夫婦は、「ZEH水準の物件を購入したい」と希望される方が増えてきました。2030年の義務レベルを満たした物件を購入することで、将来的な資産価値を維持したいと考えていらっしゃるようです。

野村不動産では、2022年11月以降に着工した分譲マンションは原則としてZEH水準の仕様としております。さらに2024年5月からは、「プラウド横浜新子安」を皮切りに「断熱性能等級6」の物件供給も始まり、段階的に推奨してまいります。断熱等級6では冷暖房にかかる一次エネルギー消費量を約30%削減できます。断熱性能が上がることで、室内の上下温度差が低減し、ヒートショックを軽減するなどの利点があります。

とはいえ、断熱性能等級の数値の差は、お客様にはなかなか伝わりづらいですよね。今後は、「断熱性能が上がると、快適性や健康への影響など、暮らしがより豊かになる」という具体的な事例も含めて、お客様にご紹介していきたいです。

田辺日本サステイナブル建築協会(JSBC)では、スマートウェルネス住宅に関する研究を行っています。BEST健康評価ツールとして「BHAT(ビーハット)」という戸建住宅用の評価ツールをリリースしました。住宅の断熱性能等級を引き上げることで風邪を引く割合や夜間頻尿の割合などがどれくらい下がるかを「見える化」し、そのメリットを分かりやすく伝えることができるツールです。現在は戸建て専用ですが、今後は集合住宅用の計算ツールもリリース予定なので、ぜひ皆様にもお使いいただければと思います。

マンションにも
高効率給湯器を

村上健康は、性別・年齢を問わず全てのお客様が気にしていらっしゃることです。一方で、住宅の断熱性能と健康との関係は日々暮らしているなかでは気づきにくいとも感じております。そこを「見える化」して、高断熱住宅をより身近に感じていただけることは、とても嬉しいですね。

また住宅の中で健康を担う設備としては、お風呂も欠かせません。その点でリンナイの高効率給湯器「ECO ONE」は、ZEH水準の機能向上として今後のカギとなるだけではなく、気兼ねなくお風呂を楽しんでいただく商品としても期待しています。当社は分譲戸建て「プラウドシーズン」において、2025年度までに太陽光発電・蓄電池・高効率給湯器付きの住宅を、東京都で着工する5割に採用することを発表しておりますが、今後は、マンションでも高効率給湯器の採用を進め、暮らしに心地よい体験と環境性能をお届けできるように進めてまいります。

ヒートポンプの力でお湯を沸かすこうした給湯器は、タンクのサイズが大きくマンションでは採用しにくい課題がありました。しかし、ECO ONE X5(写真)のようにベランダに設置可能なタイプが登場したことで、その問題が解決しつつあります。

マンション用タイプのハイブリッド給湯器「ECO ONE X5」のベランダ設置イメージ
リンナイ 開発本部 第三商品開発部 林泰平 部長

村上さんが仰るように、タンクを持つ給湯器の一番の課題は、やはり設置場所。集合住宅向けのECO ONE X5は、ターボヒーティングという独自の湯沸かし制御技術により、70リットルという小型のタンクながらも業界トップクラスの給湯効率を実現できた製品です。タンクの中の湯水は、断水時に生活用水としても使えるなど、住宅のレリジエンス性能を高めることにも一役買います。

村上特に高層のマンションでは、災害時に水の確保が難しいと言われております。1つの家庭で70リットルもの水を確保できるというのは確かに大きな安心につながりますね。

田辺健康で心地よい体験、いざというときに備えられる安心感に環境・省エネ性能など、現在の集合住宅に求められる要素は多岐にわたります。いわゆる「箱」を提供するにとどまらない難しさがありますね。豊かな生活を実現するのに相応しい設備機器を提案しながら、一方で各設備が長期的に使用し続けられるか、また管理組合などを通じて適正に運用ができるかというソフト面にまで気を配らなくてはならない。こうした複雑な課題に直面しながらも、日々変わりゆく生活者のライフスタイルを研究し、常に豊かさを提案し続ける野村不動産の姿勢に感服しています。

マンション用タイプのハイブリッド給湯器「ECO ONE X5」の玄関側PS設置イメージ

<後篇>
災害時の安心と省エネ、癒しを実現できる住宅へ